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福岡県の不動産市況
福岡県の不動産市況
本特集記事は、県内49社の宅建業者を対象に、1月~3月にわたってヒアリング・インタビューを行い、これに不動産ネット「ふれんず」のデータを参考にしながら県内の賃貸市場の動向についてまとめたものです。
福岡市東区・東部地区
新大学設立で賃貸需要が増加
 新宮や香椎に挟まれた和白丘エリアは、比較的賃料が安いため成約率が高まっている状況です。
 福工大や九産大が近くにあり、単身者、学生向けの物件が多くあります。コロナの影響で実家から通う学生が増えましたが、その分、外国人が学生アパートに入居するケースが増えています。
 また、令和4年には、令和健康科学大学が開校し、春期は大学職員や学生の賃貸需要が増加しています。このような影響から、賃料相場は前年に比べ各間取りともに上昇しています。
箱崎九大キャンパス再開発に期待
 箱崎エリアについては、福岡市の大規模開発プロジェクトである九州大学箱崎キャンパス跡地の再開発が進めばさらに地価は高騰すると予測されます。
 賃貸市場をみると、九州大学が移転したことで、周辺の空室となった学生向け賃貸物件に外国人が多く居住しています。狭くても賃料が安いと人気です。
 また、RCの1LDKが多く建設されており、シングルや共働き世帯の需要に期待しています。一方で木造アパートも新築なら1Rで5万円ほどですが、古い物件はリフォームして外国人に賃貸するなどの空室対策を行っています。
JR古賀駅東口周辺、居心地の良いまちづくりへ
 古賀市は新宮と福津の人気エリアに挟まれ、価格に値頃感が生まれています。都市機能の強化を目的とした街づくり基本計画をJR古賀駅東口周辺地区に策定し、国が推進する「ウォーカブル推進都市」の支援を受けながら進めています。
 また、今後は一部の市街化調整区域を見直し、市街化や工業用地等への転換を図ることが計画されており、要件が緩和されれば、熊本県菊池市の半導体生産拠点のように大化けする可能性も秘めています。
 賃貸市場については、昨年に比べると空室が増えています。事業用に関しては、小規模店舗の成約が増えており、空室はすぐに埋まる状況です。
 古賀市工業団地の企業は多くの外国人実習生を雇用しており、寮として1部屋で2~3人が入居できる物件を探すため、成約率も高くなっています。
利便性と自然の豊かさで人気
 糟屋郡粕屋町周辺は福岡空港や福岡ICに近く、博多駅へのアクセスの良さに加え、自然環境にも恵まれた住みやすさが人気のエリアです。今春の賃貸市場は、シングル及びファミリーの入居者が多く、空室で困ることはありません。賃料相場は、前年比でほぼ変化無しの状況です。
博多区
博多駅周辺に福岡大学の学生増、駅東では専門学校生が減少
 博多駅周辺の地価は高止まりし、賃料は新築も中古も上昇傾向にあります。博多駅東は単身者が多く、単身用の住宅が足りない状況です。人の出入りも多く、空室が出てもすぐに決まっています。特に引っ越しシーズンは、築古物件の賃料を数千円上げても決まるほどです。
 最近、地下鉄七隈線延伸で七隈方面に通学ができるようになったため、博多駅周辺には福岡大学の学生が増えています。一方で、コロナの影響もあり、博多駅東に多かった専門学校の学生が少なくなっています。リモート授業が終わっても学生の動きは戻らない状況です。
 コロナが明け、民泊業者の動きは活発化しています。収益性の高さに魅力を感じ、博多駅周辺は賃貸にも民泊にも使えるような設計の建物が増えています。
博多駅周辺の不動産価格上昇で人口が南に移動
 博多駅周辺の不動産価格が上昇し、人の動きが南に向かっているため、竹下駅周辺に熱い視線が集まっています。令和10年末に操業を終えるアサヒビール博多工場のその後にも期待が寄せられています。
 笹原駅周辺も竹下人気に引っ張られ、近年注目されています。井尻駅にも近く、南区へのアクセスが良いのも人気の要因です。
 賃貸市場は、博多駅南エリアでも和室の1DKをフローリングの1Rにリノベし、賃料3万円から4.5万円になったケースも見受けられます。今春はコロナも明け、入退去が増加。賃料相場は各間取りとも前年に比べ上昇しています。
成約率の高い美野島エリア、ゲストハウスが外国人に人気
 博多駅の南西に位置する美野島エリアは、博多駅から徒歩圏内に位置しています。築浅の1LDK35㎡が7万〜7.5万円ほどで、昨年から居住用の賃料相場にはあまり変動はないものの、テナントや駐車場は上がっています。駐車場難民が多く発生しているのも美野島エリアの特徴で、高いところでは月2万9千円と昨年に比べ2千円ほどアップしています。
 また、古くからゲストハウスがあり、外国人旅行者に人気です。
中央区
天神は供給過剰でオフィスに影響
 今年、天神ビッグバンによる民間ビルの竣工も多く、ここ数年で一番多いと言われています。大手は事業力で企業を引っ張り、満室の体を成していますが、明らかに供給過剰で、実際は想定した賃料で入居させるのは厳しい状況にあるようです。
利便性抜群の薬院エリア、賃貸、売買ともに好調
 薬院エリアの特徴は立地の良さ。天神から徒歩10分圏内に位置し、地下鉄七隈線と西鉄大牟田線が通る抜群の利便性に支えられ、賃貸、売買ともに実需系のマンションが好まれています。
 賃料相場は他エリアよりも、10%ほど高めです。20%上げても入るケースも少なくありません。
 建築費の高騰で新築の賃料設定が上がり、それに引っ張られる形で中古物件の賃料も上がっています。古い3LDKが、コロナ前の6万円台後半~7万円から8みで約8万円が相場です。とはいえ、今は万円台後半に。また薬院駅徒歩10分の築15年の70㎡15万円が18万円に上昇しています。
 中央区は地下鉄と西鉄大牟田線が走っていますが、地下鉄沿線の方がやや人気で、賃料も若干高めです。ただ、西鉄大牟田線に新駅桜並木駅が3月に開業したことで、沿線としての人気回復に期待ができそうです。
六本松周辺はブランド力が上昇
 唐人町はマンションと戸建が混在し、地行・今川は戸建、荒戸はマンションが多い特徴があります。地価や建築コストの上昇が新築賃貸の建築戸数を減らしているのか、ここ1~2年は空室がない状況です。
 六本松周辺は、再開発でブランド力が上がり、土地の相場も賃料相場も赤坂並みもしくはすでに上回っているという声も聞かれます。
南区
賃貸1LDK30㎡が増加傾向
 南区の中心、大橋は西鉄電車駅の乗降客数が令和4年に2位を記録するほど人気のエリアで、賃貸市場もコロナ前に戻り、同地区の賃料は上げざるを得ない状況です。
 今春期の賃貸市場では、1R20㎡が減少し、1LDK30㎡が増加傾向にあります。大橋周辺は古くても6万円、新築なら7~8万円が相場です。駅の周辺には新築賃貸が建っています。
 大橋駅東口の「ゆめアール大橋」跡には令和7年3月に複合商業施設「エンクルオオハシ」が開業予定で、周辺では複数のマンションの開発計画があるようです。
アクセスの良さで人気の高宮、急行電車で朝の利便性アップ
 高宮周辺は天神・博多へのアクセスが良く、空室が出てもすぐに埋まる人気のエリアです。
 また、西鉄が朝のラッシュ時の上りのみ平尾駅・高宮駅で急行を停車させるとしたことで、さらに利便性が高まりそうです。玉川、大楠、清水では地価の上昇でアパートの建売では採算が合わず、広めの敷地は高齢者施設や保育園、また、1LDK30㎡超の賃貸物件に変わってきています。1LDKの賃貸はここ数年で複数棟が建築されていますが、空室が目立つことはないようです。
賃料の変化で外国人入居が難航
 井尻周辺は、西鉄井尻駅とJR笹原駅が徒歩圏内にあり、天神、博多へのアクセスに恵まれています。
 曰佐周辺は、1万円台後半の古いアパートがあります。ただ、アスベストに関する法改正がきっかけで、古アパートを取り壊し、新築を建てる動きが出はじめ、賃料体系が激変して、安い賃料を求める外国人が物件を探しづらくなっています。
地主の世代交代でファミリー物件の建設に動き
 屋形原エリアは地下鉄や西鉄電車が走っておらず、車やバスに頼った移動手段が主となるため、渋滞箇所が多く、その緩和が課題です。やよい坂もその一つですが、現在の2車線を4車線に拡幅する道路計画が進行中です。
 また、地主が世代交代し、ファミリー向け賃貸マンションを建てる動きが出てきています。
 長住エリアは人気のエリアで、長住商店街も活気があります。
城南・早良・西区、糸島地区
住宅と商業地で成り立つ西新
 早良区の西新エリアは住宅街と商業施設で成り立つ街で、文教地区として充実した教育環境もあり、福岡では良い住環境として人気の街です。地下鉄沿線は転勤族やファミリー層に人気です。
 他県からの転勤族のうち、ファミリー層は社宅として13~15万円で入居します。地元の人は駐車場込みで約8万円が相場です。とはいえ、今はマンションも戸建も空室がありません。
原・飯倉の賃貸市場順調、今は入居者を選ぶほどに
 早良区の原や飯倉は十数年前まで、単身者向けのマンションやアパートは空室が多く、値下げや敷金をゼロにしたり、ペット可にしたり、生活保護者の入居を可とするなど、空室対策に苦労していましたが、今は入居者を選ぶほどまでに回復しています。
 今春の賃貸市場を見ても、順調に申込みが入っている状況で、賃料を少し値上げしている物件も出てきていますが、成約率は大方横ばい状態です。
九大生は学研都市駅周辺に、人気の糸島市は人口が増加
 かつて、今宿駅周辺には1Rが多く建ち、九大生が居住していましたが、九州大学が伊都キャンパスに移転した際は、九大学研都市駅周辺に1Rが建ちはじめ、学生の住居の中心がそちらに移りました。現在、今宿駅周辺はファミリー層が多く、九大生が住んでいた賃料4万円弱の1Rには、社会人が住んでいます。九大学研都市駅〜周船寺駅間には、今も1Rが2~3棟建設中です。今宿駅周辺は空地がなく、新規の供給が見込めないことから、空けばすぐに埋まるという状況が続きそうです。
 糸島市は全国的にも注目を集める人気の移住先で、人口も増加中です。直近3年間の市場変化を見ると、新築・中古賃貸の賃料は、ともに上昇しています。ただ、今後は横ばいか、上がっても少しではないかと見ています。

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