福岡県の不動産市況
本特集記事は、県内49社の宅建業者を対象に、1月~3月にわたってヒアリング・インタビューを行い、これに不動産ネット「ふれんず」のデータを参考にしながら県内の賃貸市場の動向についてまとめたものです。
北九州市
市中心部の再開発で動向に関心
北九州市の中心部である小倉北区はJR小倉駅やモノレール小倉駅、北九州市役所があるエリアです。人気の大手町は、最寄駅がJR西小倉駅で、あまり便利は良くないものの、街並みが綺麗で安全とのイメージが形成され、ここ10年で「大手町ブランド」として定着しています。そのため、少し高めの賃料でも動きやすく、賃貸マンションなら70㎡15万円が相場です。
モノレール小倉駅から5つめの駅に位置する片野は、通勤の便利さから単身者や夫婦世帯が多く住むエリアです。
JR南小倉駅に近い弁天町は、大手町よりも価格は低めで、3LDK10万円前後です。
弁天町は九州歯科大学、九州栄養福祉大学など学校が多く、学生向けの賃貸物件が多く存在しますが、学生数の減少で問合わせ件数は減少しています。コロナ禍で留学生が来日できなかったことも要因です。学生向けアパートは賃料2万円を切るところもあり、新築35㎡で6万円が相場です。
魚町に本年6月に完成するオフィスビル「ビジア小倉」には日本IBM等のIT企業が入居する予定で、市中心部の再開発として動向に関心が集まっています。
小倉南区・西区
関東・関西圏からの転勤族、ファミリー層も守恒から大手町へ
小倉南区西部エリアはモノレールを中心とした地域。人気のエリアは、学校区の人気が高い守恒、企救丘、徳力。特に守恒は、ファミリー層を軸に人気です。守恒駅そばの賃料相場は、少し前まで広い3LDKで月15万円前後でしたが、今は10万円くらいにまで下がっています。また、大きな開発は見られないものの賃貸マンションの建替えが多くなっています。
小倉南区東部エリアは、JR下曽根駅周辺が開発され、商業地として活性化し、より生活しやすい環境が整っています。また、上葛原の複合商業施設周辺も人気があり、成約率の高いエリアです。長野地区に商業団地、物流拠点ができる計画で、市街化調整区域が市街化区域に変更されたため、期待の持てるエリアです。
門司区
サッポロビール跡地開発が一段落
門司区は、門司駅周辺の大里地区と門司港地区がありますが、門司港地区に住む人はわずかです。門司駅周辺は北側のサッポロビール工場跡地の開発が一段落し、今は山側が動いています。跡地開発地域では大里栁小学校区が大人気で、戸建やマンションが増え、児童数が増加しています。
八幡西区
商業施設閉鎖で住居系にシフト
北九州市で最も人口の多い八幡西区。その中心地、JR黒崎駅の東側に位置したデパートやショッピングモールが令和2年に倒産。また西側の商業施設も閉鎖され、現在は市が購入し八幡西区役所が使用しています。
駅近ですが商業施設が不振であるため住居系にシフトしています。黒崎はファミリー層に人気のエリアで、2~3LDKの需要が高く、賃料も上昇していますが、飽和状態のため、郊外にもアパートの募集が多くある状況です。
折尾は九州女子大、九州共立大、産業医大などの大学が多く、学生が多いエリアです。今年は新築が建っておらず、その分、空室率は低く抑えられています。
平野地区は商業・住居複合開発「皿倉テラス」が進行中
八幡東区役所がある中央町商店街は、かつて栄えていましたが、中心部にあった公団住宅は2年ほど前に解体され、今も放置されたままの状態です。とはいえ、賃貸の成約率は、単身・ファミリー層ともに高く、賃料に変化はありません。
平野地区では、商業・住居複合開発「皿倉テラス」が進行中で、今年上期には商業部分が開業予定です。新日鉄の社宅跡地で、約70世帯の住居が南側に、北側には商業施設が建設される予定です。
若松区
戸建賃貸の需要増、コロナ前の繁忙期ほどに回復
若松区東側エリアは、古くからの商店街がシャッター通りになっていましたが、平成30年に若戸大橋の通行料が無料となったことで、小倉方面や若松北海岸への通勤が便利になり、1LDKなどの単身者用アパート・マンションが増えている状況です。
中部の二島エリアは、折尾・黒崎方面へのアクセスもよく、ファミリータイプの古いアパートが多い地域でしたが、最近は、単身者用の1LDKも増えています。
西側に位置する高須・青葉台エリアは、開発から30年が経過し、高齢化が進んで、中古住宅が増加しています。
二島と高須の間に位置するひびきの塩屋エリアは、北九州学術研究都市として、大学を中心に住宅や商業施設が発展してきました。大学生向けの1Kや1LDKもありますが、ファミリー用の2LDKも多くあります。
若松の東側から中部エリアでは、古い戸建てを安く買い取り、4~5万円で賃貸に出すケースが増えています。その需要として、子どもやペットがいる家庭や、北海岸や南二島に通勤する外国人研修生のために法人が社宅として借りるパターンがあります。特に若松北海岸は、半導体関連の新工場建設も予定されており、今後も小石~若戸大橋エリアは住宅需要が見込まれます。
今年の繁忙期は、コロナ以前とまではいかないまでも、ファミリー層の移動、法人の人事異動が復活したように感じられました。ただ、若松区全体としては、人口が減少しているため、賃料アップや販売価格の上昇はなかなか見込めない状況です。
戸畑区
戸畑区は博多や小倉のベッドタウン
博多や小倉のベッドタウンである戸畑エリアでは、九州工業大学周辺に学生向けの1Kが多く、少し前から飽和状態で、近年、新築は建っていません。駅前は単身者や夫婦世帯向けに1LDKや1DKの賃貸が多く、1Kはありません。
PAGE
TOP