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福岡県の不動産市況
福岡県の不動産市況
本特集記事は、県内49社の宅建業者を対象に、1月~3月にわたってヒアリング・インタビューを行い、これに不動産ネット「ふれんず」のデータを参考にしながら県内の賃貸市場の動向についてまとめたものです。
筑紫野地区
入居率97%超えの那珂川エリア、賃料相場も右肩上がり
 南半分が田畑と山で囲まれた自然豊かな那珂川市。北部の博多南駅や西鉄バス那珂川営業所周辺が市街地となっています。近年は、道善エリアを西鉄が開発。来年は商業施設「ゆめモール那珂川(仮称)」が開業予定です。
 賃貸市場では、コロナ禍でも賃料を上げ、空いてもすぐに埋まる状況です。賃料相場もここ数年右肩上がりです。ファミリー層も多いですが、市が企業誘致に取り組んでいるため、企業の増加で単身者も増えています。
コロナ明けで来客数増えるも成約賃料は回復せず
 数校の大学がある筑紫野市ですが、特に日本経済大学はアジアの留学生が多く、賃料が安い1Rに住んでいます。1Rは飽和状態で、建物の過剰な供給が賃料を下げる結果を生み、今は、生活保護者や、精神疾患患者向けグループホームの借り手が増えています。一番安いところでは20㎡1万7千円です。
 成約率の高いエリアは、ファミリー層が二日市・原田、単身世帯は二日市・五条となっています。原田小学校、筑紫野南中学校区はファミリー層に人気です。最近給食がスタートした太宰府市立中学校の通学エリアも人気が上がりそうです。
コロナ後は徐々に空室増加、空室対策施すも賃料アップ厳しく
 春日市エリアは、西鉄大牟田線の高架化工事が一昨年に完工しましたが、駅周辺に変化はなく、地価の変動もありません。
 賃貸市場は、ほぼ空室がゼロの状態でしたが、徐々に空室が出はじめています。空室対策を施すことですぐに埋まりますが、賃料を値上げするとたちまち決まらなくなってしまう状況です。
久留米地区
商店街は飲食店が増え空店舗減
 商店街は閉店した店だらけで、事業を興せば久留米市が助成するほどだった久留米市東町。衣料系の物販が主だった商店街に飲食系が増えるなど、今の実情にあった利用が浸透した結果、空き店舗が減り、下降していた地価が上昇に転じ、昨年は全国トップの上昇率とマスコミに取り上げられました。
 空き地があればとりあえず駐車場にする時期もありましたが、今では駐車場が不足するほど活性化しており、さらに地価は上昇すると思われます。
人気の東合川、新築賃料が上昇、事業用地の争奪戦激化
 久留米で人気のエリアは東合川周辺で、大型商業施設等もある新合川にも近いエリアです。昨年、十三部交差点から国道210号間の中環状道路が全線開通し、渋滞緩和が図られています。
 東合川の新築賃料はこの1年で上昇し、ファミリータイプでは5~6千円値上げしても契約できる状況です。また、合川はドラッグストアなどの事業用地の争奪戦が激化しています。
 西鉄大牟田線の特急停車駅である花畑駅も近年人気となっています。駅周辺がきれいに区画整理されたことで、雰囲気が良くなり、富裕層に選ばれるエリアとなっています。賃貸は新築1LDKが8万円、3LDKは15万円にも上ります。
 久留米大学がある御井エリアは、学生向けの古いアパートの建て替えが進んでいます。また、新規に用地を取得し、賃料が高めの学生用新築マンションが建っています。古いアパートは空きが多く、賃料は4万円程度。戸建もありますが、動きが見えません。新築賃貸マンションが6棟ほど建っていますが、1Rタイプの※ZEH-M賃料は6~7万円です。
 久留米附設近くの戸建は、築古で10万円でも借り手があるといいます。戸建の相場5~6万に比べれば、かなり強気の設定です。
※賃貸住宅やマンションで使うエネルギーを少なく抑え、かつ、再生可能エネルギーとで正味ゼロにすることができる住宅
本年11月、小郡IC近くに「コストコ」オープン予定
 九州自動車道、大分自動車道のIC、西鉄電車、甘木鉄道の各駅があり交通利便性が高い小郡。その地の利を活かし、本年11月には会員制量販店「コストコ」が開業予定です。物流企業の呼び込みに成功した鳥栖に倣ったと言われていますが、物流関係では雇用や人口増加は見込めないとする意見もあります。
 また、筑後小郡IC近くの立石地区周辺は、市街化調整区域であり、今後の地価への影響が注視されます。
 小郡の人気エリアは、小郡イオンがある大保地区です。賃貸市場をみると、動きに大きな変化はなく、コロナ禍に比べれば、いくぶん良くなっている程度です。
 昨年の秋以降は退去者が減っています。ファミリー層の退去理由は、多くが「家を買うから」ですが、その需要がないのが要因の一つです。
県南地区
八女市内へ転居する高齢者や田舎に憧れる移住者が増加
 福岡県下、2番目に広い面積を持つ八女市。市の中心は官公庁のある本村ですが、旧町村それぞれに役場があり商店街もあります。
 山間部には戸建に住む高齢者が多いですが、生活に不便なため、市内の施設や貸家に転居するケースが増えています。土砂災害や水害が多い山間部から出たいと考える高齢者も多いといいます。
 ここ10年くらいで、田舎暮らしに憧れ移住する人が増加。1年間の農業支援制度を利用し、終了後は農地を借りて農業をやる若者も少なくありません。
 市内外から人の移動があるため、不動産は動くものの、地価や賃料相場は下がっています。大手業者が建物を建てサブリースをしたり、農家がアパートを建てたりと物件が供給過多になっています。
 ヤマエグループホールディングスが前古賀工業団地内に新工場を建設し、令和8年に操業を開始する予定で、新たな雇用が生まれることが期待されています。
工業団地や学校を背景に根強い住宅需要
万人。周りが過疎化している中で人口を維持しています。
 広川中核工業団地と久留米・広川新産業団地があり、その工業団地の従業員と久留米工業大学や専門学校に通う学生向けの単身用アパート、ファミリー用の戸建を中心とした住宅需要が根強いエリアです。
 八女から久留米へと通勤する人が広川に住居を構えるケースや、久留米の地価が高いのを敬遠して広川に住むケースなど、福岡へのアクセスが良いとの理由で、広川が選ばれる要因となっています。
持ち家志向は羽犬塚から通勤、外国人従業員用に借り上げも
 筑後市は県南地域で住宅需要が一番多いエリア。筑後市にはJR西牟田駅、羽犬塚駅、筑後船小屋駅があり、筑後船小屋駅には新幹線も停車します。羽犬塚駅から2kmの地点には八女ICもあります。
 新幹線ができ羽犬塚駅と瀬高駅に特急が止まらなくなったことで、人の流れが止まり、それが県南地域の衰退原因と分析する人もいます。一方で、不動産価格の高い福岡市内での持ち家を諦め、羽犬塚に家を建てて通勤する人も少なくありません。
 筑後市は外国人が多く住んでおり、外国人従業員用に、古いアパートを会社が借り上げるケースもあります。
子育て施策の充実で移住者も
 瀬高、山川、高田の3町が合併して発足したみやま市。発足時の人口は約4万人でしたが、今は3万5千人に減少。産業は農業が主で、外国人も多くいるエリアです。新築賃貸はあまり供給されず、賃料は、2LDK50㎡で5万6千円が相場です。
 みやま市は子育て施策が充実しており、大牟田市から移住する人がいますが、直近3年間の市場変化は鈍化しています。
 賃貸市場については、シングルよりファミリーに動きがあります。
筑豊地区
コンパクトシティ構想が進行中
 飯塚エリアでは、JR飯塚駅西側に大型商業施設「ゆめタウン」が昨年オープンしたことやJR飯塚駅の駅舎建替及びロータリー整備等の計画が発表されたことにより菰田地区では不動産取引が増え、土地価格も上昇しています。
 従来より人気の高いJR新飯塚駅周辺の新飯塚地区は、昨年「本当に住みやすい街大賞2023in福岡」(主催:住宅ローン専門金融機関アルヒ株式会社)で第3位を獲得し、注目を集めています。
 現在、福岡都市圏とを繋ぐ国道201号線「八木山バイパス」の2車線から4車線への拡幅工事が進行中で、福岡への利便性がさらに高まることに期待が寄せられています。
 賃貸市場に目を向けると、飯塚市には近畿大学や九州工業大学等があり、大学周辺は学生向けのシングルタイプが多く、外国人研修生の入居も増えています。新築ほど成約していますが、古い物件は空きが多い状況です。相場としては、シングル1Kタイプ18~20㎡が3万円前後(バス・トイレが一緒だと2万円前後)ですが、新築の家賃はここ数年の建築コスト上昇で高騰しており、30㎡前後で4.5万~5万円(ネット無料、宅配ボックス、オートロック、防犯カメラ付き)となっています。またファミリータイプの新築物件も増えていますが、人口が微減状態であることに加え、古い物件からの引越しとなるため、古い物件の空室が目立っています。
市立中学7校を2校に再編、両校周辺にファミリー層が増加
 田川エリアは炭鉱住宅が公営住宅に建て替えられ、高齢者が多く暮らしていますが、生活保護率も高い状況です。また、若い世代が田川市を出て福岡市に移住する傾向にあり、人口は微減状態が続いています。
 昨年、市立中学校7校が再編され、田川西中、田川東中の2校になりました。2校とも駅から徒歩約10分に位置し、周辺にはファミリー層が増えています。
 伊田には福岡県立大学がありますが、生徒数は1000人弱ですが、10年前から1Rの新築が建ちはじめ、すでにオーバーフロー状態です。新築は埋まっており、古い1Rは賃料2~3万円で外国人や生活保護者も入居しています。
 地元に定住しようとする人の多くは、金利が安い分、戸建を買いますが、その背景には賃料が安くないこともあるようです。
稲築エリアがファミリー層に人気
 北九州と久留米を結ぶ322号線「嘉麻バイパス」が一部開通し、令和9年度には全面開通する予定で、物流が良くなるのではと期待されています。
 嘉麻市には、ファミリー向け賃貸マンションが数年前に1棟建設されましたが賃料は飯塚市とほとんど変わらず、岩崎あたりで2LDK50㎡が5万5千円です。
 嘉麻市内の小中学校各3校が小中一貫校として再編され、昨年開校しました。このうちの2校がある稲築地区がファミリー層に人気です。廃校となった足白小学校の体育館を九州最大級のボルダリング施設としてオープンし、隣には校舎を利用した足白農泊施設も開設。今後の盛り上がりが期待されます。
一極化により地方衰退が懸念
 鞍手町は、福岡市と北九州市へ鞍手ICから各30分の場所に位置しています。鞍手町役場の新庁舎が来年1月に小牧に開庁予定で、敷地内には博物館別館や子ども広場なども整備される予定です。小中学校も新庁舎横に移転する話があります。コンパクトシティ構想で公共公益施設を一カ所に集中させた場合、移転元の衰退をどう食い止めるかが課題です。
 木月には工業団地があり、住宅・自動車関連の工場がありますが、周辺の賃貸物件には多くの外国人が居住しています。小規模の土木業者が従業員のために法人契約しているケースも見受けられます。

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